東京の息苦しさから解放されたいときに。都会なのにほっとできる街、台北を描いた『台北暮色』♪

はじめに。

突然ですが台北を旅したことはありますか??

日本から3時間半くらいで行けますし、お手頃価格で旅行できる人気のスポットなので、行かれたことある方も多いかもしれません。

私も一度旅行したことがあり、正直ガイドブックに載っている観光地みたいな所はそれほど印象に残らなかったですが(笑)、台北の街並みや風景はすぐに好きになってしまいました。

東京同様先進的なアジアの都市なのに、高層ビルやマンションもどこかノスタルジックで、それが独特の魅力になっています。

東京は新しい建物が多いし、街がきれいに整っているのですが、それが味気ない感じに見えてしまうことも多いですよね。

台北のマンションは、ベランダの洗濯物の干し方や室外機の感じがなんか懐かしくて、全体的に雑多な雰囲気でほっとしちゃうんですよね~

『台北暮色』は私も大好きなホウ・シャオシェンが製作総指揮だということでアジア映画好きの心をくすぐる部分もあるのですが、そんなこと全然知らなくても日本の都市の息苦しさを感じている人が見て、「身近にこんな都市があるんだなぁ」とちょっと肩の力を抜くことができる「都市映画」かなと思います。

『台北暮色』とは・・・

『台北暮色』

日本公開日:2018年11月24日

監督・脚本:ホアン・シー

製作総指揮:ホウ・シャオシェン

出演者:リマ・ジタン、クー・ユールン( 『牯嶺街少年街殺人事件』)、ホアン・ユエン(『酷馬』)

★あらすじ★

様々な事情や背景を持つ人が暮らす都市、台北。

マンションでインコと暮らす一人暮らしの女性シューは、しょっちゅう自分の携帯電話にかかってくる「ジョニー」という人物あての間違い電話に困っていた。

シューは結婚して子供がいてもおかしくないような年齢に見えるが、家族はいるのか、どこの出身なのかは語られず、シューの人生は謎に包まれている。

孤独で閉鎖的に見えたシューの台北の暮らし。

しかしシューと同じマンションに暮らす、ハンディキャップを持ちながらも「今」を精一杯楽しむ青年リーや、40歳近くに見えるがなんだか風采の上がらない工事現場で働く男性フォンと、シューの人生は緩やかにまじりあっていく。

そしてだんだんと、台北の雑多で人間味あふれる風景のように、シューの生活も台北の人々との繋がりで彩られ始め、シューの過去も明らかになっていく・・・

ホアン・シー監督とは?

  • 1975年台北生まれ
  • アジアでもまだまだ少ない女性監督
  • ニューヨーク大学在学中にホウ・シャオシェン監督の「憂鬱な楽園」にインターンとして参加
  • 帰国後、同じくホウ・シャオシェン監督の「黒衣の刺客」等の製作に関わる
  • 2019年にはすでに新作『女儿们的女儿( My Daughters’ Daughter )』が準備されているよう

『台北暮色』が映画監督デビュー作となるホアン・シー監督。

ホアン監督のお父さんと製作総指揮を務めたホウ監督は中高の同級生とのことで、そのつながりからホウ監督の映画製作に参加するようになったとのこと。

ニューヨーク大学では映画を学んでいたとのことですが、ニューヨーク大学の映画学科といえばアン・リーなど著名な映画監督もたくさん輩出している名門大学です。

しかも初監督作が世界的に有名な映画監督、ホウ・シャオシェンの製作総指揮の下で作られるなんて、すごい、ホアン・シー監督、映画界のスーパーエリートです・・・!

そんな台湾映画界の超注目監督だけあって、『台北暮色』は初監督作にもかかわらず2017年のフィルメックス(東京で毎年開催されるアジア映画を中心とした映画祭)のコンペティションに出品。

また中国語のサイトでの情報のため詳細は分からなかったのですが、間をあけずすでに次回作 『女儿们的女儿( My Daughters’ Daughter )』が準備されているなど、今後が楽しみな監督です。

『台北暮色』のみどころ

世界標準の都会美女、リマ・ジタンがアジア映画のヒロインとして新鮮!

『台北暮色』の主人公シューを演じるのは、これが長編映画初出演のリマ・ジタンさん。リマさんはレバノン人のお父さんと台湾人のお母さんを両親に持ち、レバノン出身・台湾育ちとのことで、エキゾチックな美人さんです。数か国語が話せ語学も堪能だそうですよ。

きれいに日焼けもされていて、体も引き締まっていたので、これはトレーニングされている方だろうなぁと思いインスタグラムをのぞかせていただいたら、やはりかなりアクティブな投稿が多かったです。

そのリマさん演じるシューは、今までのアジア映画で見なかったタイプでとても現代的で新鮮に感じました。

シューはいつもショートパンツ姿で、Tシャツも胸元が大きめに開いたタイプが多く露出度が高いのですが、決していやらしい印象にならずセクシーよりもヘルシービューティーという言葉がぴったりな感じ。

最初にシューが登場した時、背が高くモデル体型であることと、ロングヘアという共通点で、すぐに「これはホウ・シャオシェン映画でのスー・チーを意識しているのかな」と思いました。

ただホウ・シャオシェン映画に登場する、『ミレニアムマンボ』の主人公や、『百年恋歌』の「青春の夢」パートの主人公女性など、現代女性のキャラクターはちょっと古い表現ですが「はすっぱ」とか、「すれてる」というような表現が合うようなタイプ。お酒ぐびぐび、たばこスパスパで、どことなくダークな部分を感じさせる若い女性キャラクターが魅力的でした。

一方『台北暮色』のシューは、謎めいたところはあるものの、健康的で溌溂とした雰囲気。この辺が90年代後半から2000年代初めのころの若者像と、2010年代以降の若者像の違いなのかなと感じました。

主人公のシューは、booking.comに載っていそうなカジュアルでリーズナブルな雰囲気のホテルのフロントで働いていて、海外からのゲストに流ちょうな英語で案内をしているシーンがあります。

このくらいの親しみやすいホテルにも流ちょうな英語が話せるスタッフがいるようになったというのも今どきのアジア都市らしい感じがして、リアリティがありました。

語学の取得とワークアウトは、今や世界中の意識高い系の人がこぞって取り組んでいること。英語が堪能で筋肉質な整った体を持ったシューは、世界のどこの都市にいてもおかしくない感じ。ボーダレスな今の時代を反映したニュータイプのヒロインです。

近すぎるほどうまくいかないコミュニケーションの難しさ

『台北暮色』の大きなテーマとなっているのが「家族」。

『台北暮色』では様々な家族のあり方を通して、 家族や身近な人との距離の取り方やコミュニケーションの難しさが表現されています。

家族間のコミュニケーションてなかなかうまくいかないですよね。他人だったら冷静に話せるようなことも、どうしても感情的になってしまったり。そのせいで、お互い一番心に引っかかっていることや話したいことを伝えられないなんてこと、誰にでもあるのではないでしょうか。

印象的なのが、フォンの「距離が近すぎると愛し方を忘れる」というセリフ。フォンの幼馴染は3世代で暮らす伝統的な家族ですが、いつも父と息子は喧嘩ばかり。まるで自分の父と亡くなった祖父母を見ているようです。

余談ですが、このフォンの幼馴染役を演じているのが『ミレニアムマンボ』でスー・チーの恋人役を演じていた俳優さんだと気づき、映画を見ながらテンションあがってしまいましたww

『ミレニアムマンボ』での役柄は、実家がお金持ちのボンボンで、親の金を盗んでドラッグに酒にで働かず、嫉妬深くスー・チー演じる恋人を以上に束縛したがるクズ男を演じていてそのイメージが強く、さしずめ昔やんちゃしてた息子が今は長男らしく家に入ったがやはり父親とはそりが合わない、みたいな一人の俳優さんを通してクロニクル的な意味合いを勝手に感じてしまいました・・

一方のフォン自身は幼いころ両親が離婚し、父親か母親のどちらかを選ばなければいけなかったことで、心が引き裂かれた傷を今も抱えていて家族とは疎遠な様子。こちらも家族と良い関係性を築いているように見えません。

もう一人の主人公であるハンデをかかえるリーは、それを補うため母親との間でたくさんの「ふせん」をコミュニケーションの手段として使っています。リーの母親は、やらなければいけないことを忘れがちなリーをサポートするため、to doをとにかくふせんに書き、部屋の壁にどんどん貼っていきます。

ハンデがあっても日常生活で困ることがないようにという母の愛で、壁はto doが書かれたふせんでいっぱい。母親の気持ちはわかりつつも、「今」の気持ちや衝動に正直なリーはしばしば約束をすっぽかし、親子はぶつかりあってしまいます。

謎めいた生活を送るシューも、やはり家族の問題を抱えていて…こちらはネタバレになっちゃうのでぜひ作品を見てくださいね。 そんなシューの台北生活の唯一の家族といえるのがインコたち。美しくて賢い鳥たちと、孤独なシューはそっと寄り添いあうように暮しています。シューはインコたちにご飯を与えたり、水浴びをさせてあげたりと、愛情深くかいがいしく世話をすることで自分の心を癒しているように見えます。

劇中、シューにとってはそんな家族同然なインコが逃げてしまい、シューはとても心配し手を尽くして探し回ります。大事なものを失って心に穴が開いてしまったようなシュー。そんな気持ちに共感して、心が締め付けられました。

また、シューの携帯電話にかかってくる「ジョニー」という人物あての間違い電話も、人と人との繋がりのもろさを感じさせました。シューの電話に相手がジョニーと思って間違い電話をかけてくるのはジョニーという人物の友達や元奥さんなど身近な人ばかり。それでも間違った電話番号しか知らなければ、もう二度と会うこともできないかもしれません。

ホアン・イー監督の次回作のタイトルは 『女儿们的女儿( My Daughters’ Daughter )』 ということなので、こちらも家族にまつわるストーリーなのかなと思います。ホアン監督にとって「家族」というテーマは今後も繰り返し描かれるものになるかもしれませんね。

一つの生命体としての都市・台北

『台北暮色』を見ていると、ホアン監督が「台北」という街をひとつの生き物のように映していると感じました。

劇中何度も登場する大きな道路での車の渋滞シーンでは、多くの車のヘッドライトの明かりが美しい夕暮れの中に連なっていて、まさしく「大動脈」という感じで「台北」という生きた街のエネルギーが流れているようです。

『台北暮色』は観客と主人公たちの距離は適度に離れていて、最後まで主人公たちについては謎めいたところが残されたままです。これは主人公たちの視点に寄り添った描き方というより、上の渋滞の場面など台北の街を一緒に切り取りながら、その中で主人公たちが行動している、といった感じのシーンが多いからだと思います。 少し離れた高いところに視点があって、そこから主人公たちを見守っているような感覚です。

シューとフォンが迷路のような高架の遊歩道を二人でダッシュするという素敵な夜の場面があるのですが、こちらもそんな感想を持ったシーンの一つでした。「台北」という大きな生き物に、瑞々しく走り抜ける二人が守られ包み込まれているような感覚になりました。

そうして同じように客観的な視点で自分の周りの世界を見られると、毎日の心配事や悩みやストレスが小さくかわいいものに思えて、少しだけ気楽になれそうな気がしちゃいます。

おわりに。

ここまで『台北暮色』の私なりのみどころをお伝えしました。

派手さはないですが、時間が経つにつれてじんわりと心にしみこんでくるような作品だと思います。ゆったりとした気分で映画を見たいときにおすすめなので、よければ一度見てみてくださいね。

こちらを書いてるうちにまた台北に旅行したくなってきちゃいました (❁´ω`❁)

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